彼はいつも本を読んでいる。移動中の車内、機内、楽屋。本に向かっているときの彼 からは独特の空気が流れている。そんなある日、僕は広い教室と、黒板を背にした先 生が投げかける言葉と光景を思い出した。「本を好きになった時に国語の殆どは終了 しているのと同じです。」これは小学1,2年生の担任だった先生がいつも口癖ように 繰り返していた言葉だ。残念ながら僕がその言葉の意味を理解できたのは、ずっとず っと後になってのことだった。本当にそのとおりだなと思う。狩野君から手渡された アルバムはまだ製品化されていないCD-Rだった。こういうのは仲間に向けた特別感を 感じるから嬉しいものだ。
  言葉をたくさん詰め込んだ人が無駄な贅肉を切り落とし、語り手の浮かべた情景に 聴き手が重ってしまうような言葉を選んでいる。物事において発言するときに、それ を知っていて発した言葉と知らないで発した言葉では意味も深みも違う。彼の作品は もちろん前者だ。アルバムが彼であり、1曲1曲が彼の彼である部分なんだろう。い つだったか、彼はエレクトリックギターをガンガンにかき鳴らしたリハーサル後 「今、フォークやりたいんですよね。」と話していた。それは世の中の流れに対して 逆から切り込んでいく面白さに反応していく一面を持ち合わせたミュージシャンなの かとも思えた。その会話を続けながら横に立てかけてあったアコースティックギター を持ち、サイモン&ガーファンクルを愛おしそうに弾き出した。取っ掛かりには必ず ベーシックになるモノが存在する。こういう曲を書きたいと思わせられた曲があっ た。得をしたような気持ちになる。アルバムの紹介は『狩野良昭のアルバム』という だけでいい。仲間の美辞麗句は興味を半減させてしまうことがある。彼の浮かべた情 景が聴き手の浮かべる情景と重なる必要はない。その人の中に一枚の写真や映像が浮 かび、時間の共有を気持ちよく感じてくれれば作り手にとって次に向かう喜びとな る。
ASKA
良い職人は寡黙である。
だから時おり放たれる言葉には多くの真実が宿っている。
おしゃべりな男たちが幅をきかせる今、狩野良昭の歌が心地良い。
あんべ光俊
うーん甘酸っぺーなぁ。深くやさしい曲達でした。
長田進
狩野さんとも長いつき合いですね。
デビューのころから、ずっとギターを弾いてもらっているし、私の田舎の愛媛に、狩野さんの身内がいらっしゃることもあって、なんだかもう「親戚」みたいな気すらしています(笑)

「多摩川にて」でコーラスをさせてもらいました。
ほのぼの切ない、とてもいい曲。すごく好きです。掃除しながら、つい口ずさんじゃいます。

見た目は渋くきめていますが(笑)、実は狩野氏は癒し系です。このアルバムもかなり癒されますよ。

狩野さん、アルバム完成おめでとう♪
加藤いづみ
狩野さんはモノクロームだ。黒と白だけのフィルム映画のような世界を持っている。
私は、いつかスタジオで狩野さんが口ずさんだ声を聞いたことがあった。その時にも思った。どんな言葉であろうと、狩野さんの喉仏にかかれば全てが現実感を帯び、思い出さえも今まだ生きているような、物悲しい気持ちになる。フォークソング好きの私には、たまらなく好きな歌声だ・・・。そして狩野さんのギターは、歌声よりも何かを叫んでいるように歌っているので、二重合唱のように聞こえる。それがスーっと背中を這ってゆく。
  中でも私は「そうに決まっている」がとても好きだ。力強くなく、弱くなく、嘆くでもない、自分に言い聞かせているような感じが、なんだか前向きな気持ちにさせてくれる不思議な歌だと思う。ギタリスト狩野さんは、人間狩野さんなのだ。
熊木杏里
ボーカリストとギタリストの罪なら、私は絶対にギタリストの方が罪深いぞと思っていますが、その罪のどちらとも手にしてしまった狩野さんは、もはや重罪です (笑)。
更には、うたうその言葉やメロディーで、ますます世の女性達の心をズキュンと落と してしまうのでしょうね(異性の心をも)。それでもまた、そのスラリとのびた指先 でギターを鳴らしながら「ぼくはだれのもんでもなくて」なんて、きっとこう云うハ ズ。そうに決まってる(モノクロームM1より)(笑)。
「モノクローム」感動しました。すごすぎるよ狩野さん(涙)!!!サウンドもカッコ よすぎるよ…。近くセンターに立ってうたう狩野さんを後ろから眺める日を夢みて。 感じるままに 心から感謝して。
追記:私は初めて狩野さんに会った時、下から見上げながら、なんて素敵な人だろうと思ったんですよ。嗚呼、罪深い人なのだろうなって(笑)。
SHUUBI
厳寒のニューヨーク。常夏のシンガポール。いろんな街へ狩野ちゃんと僕は出かけた けれど、どこへ行っても彼は彼のままだった。知り合った頃、初台のアパートでポロ ロンとギターを弾いていたあの日のまんまだった。人は「クラプトンみたいだね」と か、「ジャックと豆の木の豆の木みたいだよね」、とか言うけれど、それはうわべだ けのことなんだ。雨の日は憂鬱な顔になり、晴れの日はフフンと笑っている。そんな 彼を僕はうらやましく思う。自然体でいることって、とてもむずかしい。だけど、そ れを簡単にやっちゃうんだよ。狩野ちゃんはね。
高橋研
今、僕は次の街へ向かう新幹線の中で
ヘッドホンをかけて ある景色を捕まえようとしてる。
僕の真後ろ 13Cの座席には 少し窮屈そうな姿勢で
静かに文庫本を読んでいる いつもの物静かで穏やかな
狩野良昭がいる。
そして 12Cの座席の僕の耳元で心地よい音楽を届けて
くれているのも、まぎれもなく 穏やかでたおやかな
狩野良昭 その人なんです。
いままでの人生 これからの人生なんぞを
立ち止まって 草をちぎって空に投げてみる
そんな景色を 捕まえることができて
やはり 僕は うれしかった。
CHAGE
とうとうやってしまわれたのですね。
つくるつくる、と言っているのはずっと聞いておりましたCDをとうとう本当に作られたのですね。
そう言えば、以前、スタジオの片隅でボーカリストとふたりでギター弾き語りでフォークソングを楽しそうに歌っておられる狩野さんの姿をブース越しに拝見しながら、とてもサービス精神旺盛な方、と思っておりましたが、まさかCDを作って歌ってしまう程、歌が好きだとは思ってもいませんでした。

シンプルにギターだけを使ったアレンジがとても切なく聞こえました。
素朴な食材でおいしい料理を贅沢にいただけました。
狩野さんの純粋な人間性が素直に表れたお料理でした。
ごちそうさま。やっぱりギタリストっていいなぁー。
吉俣良
<五十音順・敬称略>
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